不動産法務

外国人の土地取得

タイでは原則、外国人(法律が外国人とみなす法人を含む)は土地を所有することができません。土地法では「外国人は不動産の所有権を取得できると定める国際協定および本法の規定に基づいて土地を取得する」(第86条第1項)と定められていますが、1971年にそれ以前に締結していた協定をすべて破棄したため、現在は同条による土地取得は認められていません。

 ただし、以下の場合は土地取得が可能となります。

  1. 4,000万バーツ以上を投資する外国人=1ライ以下の居住用地を取得可能(第96条の2)。
  2. 投資奨励法またはタイ国工業団地法により許可を得た外国人
  3. 法定相続人として相続により取得する外国人(第93条)=第87条に定める範囲内で取得可能

第87条
 前条に基づいて許可する土地は以下の通りとする。
(1)居住 1家族につき 1ライ以下
(2)商業 1ライ以下
(3)工業 10ライ以下
(4)農業 1家族につき 10ライ以下
(5)宗教 1ライ以下
(6)公益 5ライ以下
(7)墓地 1家系につき 1/2ライ以下

第93条
 外国人は法定相続人の立場において相続財産として土地を取得する。ただし、既所有分を合わせて第87条により所有が可能な範囲内とする。

第96条の2
 第86条第1項に定める国際協定に基づく外国人の土地取得に関する規定は、省令に定める4,000万バーツ以上の投資を行う外国人には適用しない。ただし、土地の使用用途は1ライ以下の居住用とし、大臣の許可を得なければならない。
 第1項に定める外国人の土地取得は、省令に定める規定、方法、条件に基づく。省令には以下の重要事項を定めるものとする。
(1)外国人が投資する事業の種類(経済および社会に利益となる事業、または投資委員会が投資奨励法に基づいて投資奨励許可を付与することを告示した事業)
(2)投資期間は3年以上
(3)外国人による土地取得を許可する地域はバンコク都、パタヤ市、テーサバーン(地方自治区)、または都市計画法により住宅地域に指定されている地域でなければならない

土地法が外国人とみなす法人とは

外国人が登録資本金の49%超の株式を保有するか、外国人の株主数が過半数となる株式会社または公開株式会社は外国人とみなされ、外国人同様に土地を取得することができません(第97条)。また、外国人とみなされる法人が他の法人の株式を保有する場合、外国人による保有とみなされます(第98条)。

第97条
 以下の法人は土地に関する権利に関して外国人とみなす。
(1)外国人が登録資本金の49%超の株式を有する、または外国人の株主が過半数となる株式会社または公開株式会社
 本章の適用上、株式会社が株主に対して発行した無記名株券の株主は外国人とみなす。
(2)外国人が全出資金の49%超の価額を出資した、または外国人の社員が過半数となる登記された合資会社または合名会社
(3)外国人の会員が過半数となる、または外国人のみもしくは主として外国人の利益を目的として事業を行う協会および協同組合
(4)外国人のみもしくは主として外国人の利益を目的とする財団

第98条
 第97条に定める法人による他の法人の株式の保有または出資が第97条に該当する場合、当該他の法人は外国人とみなす。

タイ人名義による登記

以上、タイでは外国人による土地の厳しく取得が制限されているため、タイ人の名義を借りて所有権移転登記を行うということがありますが、土地法はこの名義の貸し借りを禁止し(第96条)、名義を貸したタイ人および名義を借りた外国人双方に罰則を設けています(第111条、第113条)。合わせて、刑法の虚偽申告(第137条)および虚偽記載(第267条)の罪にも問われます。

土地法
第96条
 外国人または第97条もしくは第98条に定める法人に代わる所有者として土地を取得したことが判明した場合、土地局長は当該土地を売却する権限を有し、第94条の定めを準用する。

第111条
 第96条に違反した者は2万バーツ以下の罰金もしくは2年以下の懲役、または罰金および懲役の併科とする。

第113条
 外国人または第97条もしくは第98条に定める法人に代わって所有者として土地を取得した者は2万バーツ以下の罰金もしくは2年以下の懲役、または罰金および懲役の併科とする。

刑法
第137条
 行政官に対して他の者または国民に損害を与えうる虚偽の申告を行った者は、6カ月以下の懲役もしくは1万バーツ以下の罰金、または罰金および懲役の併科とする。

第267条
 行政官に対して虚偽の申告を行い、証拠としての使用目的を有する公開文書または公文書に他の者または国民に損害を与えうる内容を記載させた者は、3年以下の懲役もしくは6万バーツ以下の罰金、または罰金および懲役の併科とする。

コンドミニアムの所有権取得

一方、タイではコンドミニアム法に基づいて外国人および法律が外国人とみなす法人もコンドミニアムの専有部分(個別のユニット)の所有権を取得することが可能です(第19条)。ただし、外国人の保有比率は専有部分の総床面積の49%が上限となっています(第19条の2)。

コンドミニアム法に定める外国人とは

コンドミニアム法
第19条
 以下の外国人および法律が外国人とみなす法人はコンドミニアムの専有部分の所有権を取得することができる。
(1)入国管理法により永住許可を取得した外国人
(2)投資奨励法により入国を許可された外国人
(3)土地法第97条および第98条に定める法人(タイ国法により法人登記された法人)
(4)1972年(仏暦2515年)11月24日付革命団布告第281版が外国人とみなす法人で、投資奨励法により投資奨励許可を得た法人
(5)外国人または法律が外国人とみなす法人(外国通貨をタイ国に持ち込んだ場合、外国に居住する者のタイバーツ建て預金口座から引き出した場合、外国通貨建て預金口座から引き出した場合)

(参照)外国人事業法における外国人とは

外国人事業法
第4条
 本法において「外国人」は以下の通りとする。
(1)タイ国籍を有しない自然人
(2)タイ国において登記されていない法人
(3)以下に該当する、タイ国において登記された法人
   (ア)(1)、(2)または(1)もしくは(2)が50%以上を出資する法人が登録資本金の50%以上を保有する法人
   (イ)業務執行社員もしくは業務執行代理人が(1)の者である合資会社または登記された合名会社
(4)(1)、(2)、(3)または(1)、(2)もしくは(3)が50%以上を出資する法人が登録資本金の50%以上を保有する、タイ国において登記された法人

 本定義の適用上、無記名株券を発行する株式会社の株式は外国人の株式とみなす。ただし、省令に別段の定めるのある場合を除く。

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